019:ナンバリング
「37番」
そう呼ばれて私は外に出た。

ここに入ってから一度も名前を呼ばれたことなどない。
初めこそ屈辱に思えたが、今は寧ろそう呼ばれるほうがいいとさえ思える。
こいつらの口から自分の名前が紡がれることの方がきっと屈辱だ。

私を乗せた馬車はゆっくりゆっくり進んだ。
死への恐怖を味あわせるつもりなのか、それとも通りを行く人々の見世物にするつもりなのか、
どちらにしても好意のなせることではないのは分かっていたから、私は大人しく座って久々の外の空気を感じていた。

公開処刑場は、少し小高い丘の上にあった。
それはきっと多くの人に対しての見せしめの意味があったのだろうけど、
私には早く天に昇るための場所のように思えた。

私の腕を処刑人が掴んで、上半身を台の上に押し付けた。
少々痛いが、文句を言っても緩めてくれるとは思えなかったので何も言わなかった。
柵の向こうからは、見物人が痛ましそうな視線をこちらに向けている。
こんなえげつないものをわざわざ人々が見に来るのは、見に行かなかったら見に行かなかった者に対して、いちゃもんがつけられるからだ。
ろくな世の中じゃないな、
今更な感想だが、改めて思った。
処刑人がなにやら大きな声を張り上げているが、
きっと罪状でも読み上げているのだろう。

少し風が吹いた。
その風に緑の匂いが含まれていて、自分の口元が緩むのがわかった。
あぁ、いい場所だ。
自分はいいところで死ねる。
あんな光も風もないところで死ななくてよかった。
きっとここで私が流した血は大地に吸いこまれるだろう。
そうして自分はこの世界を感じることが出来るのだ。
何に縛られることもなく。


大きな刃が落ちてきた。
強い風を感じた。


私が解放された瞬間だった。






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