027:電子掲示板
この生活に疲れたわけじゃない。
結婚や子供に縛られるくらいなら、例え相手が結婚していようが縛られない恋愛でいい、なんていうのは、決して強がりなんかじゃない。


「どーでもいいけど、娘への誕生日プレゼント持って不倫相手のとこに来るなよな・・・」
彼の帰った部屋でぽつり、と呟いた独り言は、独り言にしては少し大きかった気がして、ついでに溜息もついてみた。
「どーでもいいけど」とか言いながら、不満を言ってしまったのはきっと「どーでもよくない」からだ。

自分がちょっと居た堪れなくなって、TVをつけるとバラエティをやっていた。
素人の恋愛を取り上げた番組だ。
東京の大きな電光掲示板で、愛の告白。
それを見た彼女があまりの感動に泣き笑いしている。
そこに彼がやってきて、もう一度大きな声で告白。
「おれっ、ほんとに好きだから!すごく好きだから!だから一緒にいてくださいっ!」
彼女が泣き笑いの表情のまま、一生懸命肯いて、彼が彼女を抱きしめた。
番組はハッピーエンドだ。
かわいいなぁ。そんなことを思った。
そして、少しうらやましいなぁ、と思った。
そう思ったと途端、気が緩んだのか涙が零れてきた。

いつも誰にも聞こえないように囁かれる「すき」。
誰にも知られないように、隠れて会うデート。
週末には会えない関係。
こんなのが欲しかったんじゃない。
別に不倫がしたかったんじゃない。
すきなだけなんだ。
あの人が欲しかっただけなんだ。
あの人なら、どんな形でも欲しかったんだ。
それでいいなんて、本気で思ったことはなかった。
自分にずっと言い聞かせてきただけ。

数年ぶりに声を上げて泣いた。

泣いて。泣いて。


ティッシュで鼻をかんで、頭がすっきりした。
気持ちもすっきりした。

今度は電光掲示板で告白されるような恋愛を。






100題とっぷ
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