039:オムライス
オムライスは、ケチャップごはんが1番でしょ。
そう言ったのは、誰だっけ?
今目の前に運ばれてきたオムライスを見て、そんなことを思った。
バターライスにデミグラスソースがかけられたそのオムライスは、美味しそうに湯気をたてている。
美味しそう、そう思うのに手に持ったスプーンは止まったままだ。
「どした?」
友人が心配げにこちらを伺い見る。
心配をかけたくはなかったし、勿論食べるつもりで注文したのだから、ムリヤリスプーンを動かして口に入れる。
味がしなかった。
それでも、ムリヤリスプーンを動かしては口に運ぶ。
「おいっ?お前どーしたんだよっ!?」
友人の言葉で始めて自分が泣いてることに気付いた、なんて陳腐すぎるだろ。
なんで今頃思い出すんだろう。
ずっと忘れていたのに。
スプーンを握って力説していた君の顔。
一口ほおばった後の幸せそうな笑顔。
もう二度と目の前で見ることは出来ないだろう。
「なんでもない。大丈夫」
なんて説得力のない言葉を返しておいて、オレは再びオムライスを頬張った。
時にどうしようもない後悔に苛まれても、今何をしようとも、何が戻ってくるわけではない。
今、ここで君の名を叫んでも、君が戻ってくるわけではない。
それを分かっていながら、それでもどこかに走り出したくなるようなこの焦りを押さえつけながら。
とりあえずは、この目の前の黄色い物体を片付けるために。
オムライスは、ケチャップごはんが1番でしょ。
そう言ったのは、いつかの君だった。
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