041:デリカテッセン
お惣菜のように、できあがってしまっているものだから、今でも傍においておくのだろうか。
そんなことを思った会社帰りのデリカテッセン。

付き合い始めてもう3年。
周囲からは長いってのはいいこと、なんていわれるけど、果たしてほんとにそれがいいことなのかは自分自身諮りかねるところ。
どんなに不満があっても、どんなに文句があっても、どんなに面倒くさくても、こうしていっしょにいるのは本当にすきだからなのだろうか。
たゞ単に、彼女という私がいるから、別れるのが、新しく作るのがめんどうだから。
カラダの関係を、孤独を埋める存在を探すことをしなくていいからこそ、今もまだいっしょにいるのではないのだろうか。
この棚に並んだきんぴらごぼうやかぼちゃの煮付けのように、あなたという存在をある程度知って、あなたの好きなことをある程度知って、あなたの要望をある程度かなえる存在として出来上がってしまっている私だからこそ、あなたは今も私を彼女にしてるのではないのだろうか。
売切れてしまっていたら諦めて家に帰って料理を作るように、私がいなくなったらあなたも別段気にも留めず新しく彼女を探すようになるんじゃないだろうか。

そんなネガティブ思考に引きずり込まれそうになりながら、目に付いたポテトサラダをプラスチックパックに詰める。確かこの前買った冷凍のエビフライがまだ残ってたはずだ。それで今日の晩御飯は終わらせよう。
どうにもネガティブ思考から抜け出せないまま、会計を済まし家路を急ぐ。
アパートの階段を登ったところで、部屋の前に見慣れた影がうずくまっているのが見えた。
「どしたの?」
今更な気もするが聞いてみる。
「・・・会いに来たに決まってんじゃん」
とりあえず、部屋に上げる。
確か合鍵は渡しておいたはずだが・・・。
「なんで入ってなかったの?」
「別に、なんとなく」
「−めずらしいね」
ナニに対していったのかは自分でも分からないけど、言ってしまっていた。
彼もそれがわかったのがあえて聞かなかった。
上着を脱いで彼と向き合う。
真正面に立つとそんなに違わない身長だから、目をまっすぐ合わせることができる。
「あのさ…」
ちょっと首をかしげて彼は無言で先を促した。
「すきだよ」
「俺も」
間髪いれず返ってきた答えに満足して、首に腕をからめる。
あ〜、しあわせっ♪

ぐ〜。
「…それより腹減った…う゛ぇっ!」
腕にそのまま力を入れて、首を絞める形にした。
まったく、ムードも何もあったもんじゃない。
ま、いっか。
「来るなんてきいてないから、ロクなもん用意してないからね!」
腕をほどいて、キッチンへ向かった。
自分でも分かってる。口調と違って緩んでいる顔に。
要はさ、ちゃんと、すき、って表してくれないと不安なわけよ。偶にはね。






100題とっぷ
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