海
暑くなった砂浜を急いで海へと向かった。
ほんとは水着なんてはずかしいけど、君といっしょならそれさえワクワクする。
ちょっと冷たい水に少しずつ身体を慣らしながら入ろうとしていると、急に腕をつかまれて水の中へ。
まだ準備が出来ていなかった心と身体はパニックを起こしたまま、君にしがみつく。
やっと水面に顔を出した時には、水面は肩まであって波がゆらゆらと僕を揺らす。
文句をひとつ言ってやろうと、見上げた君の顔。
いつもは見せないような笑顔をこういうときに見せるのはずるいと思う。
怒れなくなるから。
いくつもの波を越えて、そしていくつもの波をかぶって、はしゃいで。
水から出たとたん、重力を感じて体中に倦怠感がまとわりつく。
とりあえず、少し波と距離を置いて、砂浜に腰を下ろした。
意味もなく作り出した砂山はいつのまにか、城壁のある立派なお城になった。
空を映した海は、今までに見たことがないほど青い。
君の手を取って、また波の中へと走っていく。
次はあたしが君を沈める番。
そんな夢を見たある日の朝。
あたしは片手に水着を持って君に電話をする。
空は雲ひとつない晴天。
夢の中で繰り返し聞こえた波の音が、今あたしを呼んでいる。
先に沈められるのは君。